講師:ジェラルド・カーティス

2008年11月11日 (火)

ボスが全てを握る時代は終わった

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その14

ジェラルド・カーティスさんと日経BP社の黒沢正俊さん ジェラルド・カーティス: もう1つ集票マシンの話をしましょう。豊後高田という町で佐藤さんの世話人をしていた県会議員に、どういうふうにやっているか知りたいのでインタビューしたいと言ったところ、夏に呼ばれたので行ったときの話です。まずびっくりしたのは、その県会議員がステテコと腹巻で縁側に座ってビールを飲んでいたんです。そこに運動員を4、5人ぐらい集めて、みんなでビールを飲んでいました。

私が「あなた方はどうして佐藤文生さんを支持しているのですか」と質問をしたら、笑われました。『俺たちは別に佐藤文生さんなんて関係ない。支持していないんだよ。俺たちはこの県議を支持しているんだ。彼が「文ちゃんを支持しろ」と言うからやっているんだ』と言うのです。これが自民党の集票マシンです。

佐藤文生さんは豊後高田に一度も選挙キャンペーンに行きませんでした。なぜかというと……

【写真】ジェラルド・カーティスさんと、書籍『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』の編集者、日経BP社の黒沢正俊さん

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2008年10月31日 (金)

かつての自民党の集票マシンの仕組み

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その13

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 10年ぐらい前に朝日新聞の企画で、30年振りに大分県に戻って、どういうふうに変わったかということをシリーズで書いたことがあります。国東半島の一番先に姫島というきれいな島があるのですが、昔行ったときには、「占領時代に1人のアメリカの軍人が来て以来、だれも外国人は来ていない。多分、その前もいなかった」というぐらい、ほとんど外国人が行っておらず、徳川時代からあまり変わらないような社会風土の島でした。

その姫島で生まれた西村英一さんという田中派の大物がいました。当時姫島には3,000人ぐらいの有権者がいたのですが、総選挙のときに西村さんは2,670票ぐらい、2番目の社会党の人は16票、佐藤文生さんは3票、そんな感じのところでした。

当時、姫島の村長さんの部屋に行ったら、自治省のフラッグがいっぱいあって、「姫島は全国で一番政治意識の高いところである」と書いてる。「投票率が高いということは、政治意識が高いとうことだ。姫島が一番だ」と言うのですが、実際は政治意識が低いから姫島の投票率は高かったのです。……

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2008年10月20日 (月)

「お流れちょうだいします」はもう通じない、自民党の危機

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その12

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 大分に着いた次の日の経験について、この間、新聞の政治部の記者たちに話したら、みんな若い人たちでしたが、何か神秘的な外国の話をしているような顔をされました。

佐藤文生さんが「今夜、私の選挙をやってくれているいろいろな世話人が集まって宴会をする。紹介するのにちょうどいいチャンスだからついて来なさい」と言うので行きました。別府の旅館の30人ぐらい入る畳の宴会場の座敷にみんなが集まっていました。

佐藤さんと私が前に座っていると、いきなり佐藤さんに「俺の後をついて同じようにしろ」と言われました。佐藤さんは、一番右にいた人の前に座って、「お流れちょうだいします」と言って、お酒をいただいて飲んで返しました。それから次の人のところに行って、しばらく話をして、また「お流れちょうだいします」と。この「お流れちょうだい」という日本語は、今の若い人たちは知らない人がすごく多い。年をとっていても、ああいう宴会に出たことがないなら、知らない人が多いかもしれません。

「お流れちょうだい」は、日本の縦社会の非常に面白い現れです。……

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2008年10月 6日 (月)

フィールドワークで、日本の政治家が代議士になるまでを追う

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その11

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 博士論文のために、私は大分県に行きました。最初は吉田茂の研究か、日米関係のことをやろうと思ったのですが、ある日、コロンビア大学で日本人の友だちと話をしたら、ちょうどその夏、日本に戻ってお父さんの友だちであった国会議員の選挙キャンペーンを手伝った話をしてくれました。後援会があったり、中選挙区制度で同じ政党の人たちが争っていると教えてくれました。

そこで、ひらめいたんです。図書館で吉田さんの勉強をするよりも、どこか地方に行って、日本の政治家がどういうふうに代議士になるのか調べよう。そうしたら日本の草の根の民主主義が分かるのではないかと思ったのです。すでに奨学金はとっていたので、モーリー先生のところに行って、「テーマを変えたい。戦後の日米関係ではなくて、今の日本の選挙運動のことを勉強したい」と言ったところ、「そんなに興奮して言うほどパッションがあるなら、その方がいいだろう」ということで、許可をもらいました。 

日本に着いたとき、モーリー先生の学生、つまり私の先輩でセイヤーさんという人が、当時のライシャワー大使の報道官でした。「彼に連絡しなさい」と言われて電話をして、「こういう研究をしたい」と言ったら、「俺の友だちが、ある代議士の秘書をやっている。紹介するから今から行こう」となって、それで中曽根康弘さんの事務所を訪ねました。……

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2008年9月26日 (金)

社会の変化についていけない日本の政治

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その10

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 「どうして日本の政治は遅れているのだと思いますか?」と、昔からマスコミによく質問されます。私は、その質問が大嫌いです。日本のマスコミの人がそういう質問をするということは、私に「日本にお説教をしてください」ということでしょう? 私がまだ30歳そこそこのときに、そういう立場にさせられるのは嫌でしたし、そもそも私はそのとき、60~70年代の日本の政治が遅れているとは思っていませんでした。

派閥政治などはありましたが、それは結局、日本の社会のニーズに応えるという政治だったのです。自民党も、それこそ道路財源をつくって、田中角栄が日本海の貧しいところに、そのお金を持っていって公共事業をやって、そのときの日本の社会のニーズに応えたわけです。日本社会党も、とにかく「憲法改正反対、平和主義を守る」ということで必死になってやりました。日本の社会のニーズに上手に応えているんだから、「遅れている」という考え方そのものがおかしい。

ですから、その質問をされるたびに、「私は日本の政治は遅れているとは思いません」とずっと返事をしてきました。けれど5、6年ぐらい前、90年代の後半かこの世紀に入ったばかりの頃、東京のどこかで講演をしたとき、自分の口から「日本の政治は遅れています」という言葉が出たのです。

「あれっ?」と、自分でもびっくりしました。……

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2008年9月12日 (金)

だめなのは若者ではなく、若者の夢を実現できない社会構造

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その9

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 私は日本語が好きで、大学3年分の日本語の勉強を1年間でやりました。そのときは、朝から晩まで日本語の勉強をしました。1日4時間、学校で日本語の勉強をして、家に帰ったら宿題でまた4、5時間。先ほど「もともとは音楽家になろうと思ったけれど、自分に十分な才能がないと思って諦めた」と言いましたが、日本語の勉強を始めたときに、私には音楽家になる才能が十分足りないというより、音楽家になるパッションが十分なかったということが分かりました。

なぜかというと、朝からずっと日本語を勉強しても、寝るまで漢字の練習をしても、疲れないんです。面白くてしょうがない。音楽よりも、日本語を覚えることにパッションがあったのです。

ピアノはずっと何となくはやってきたのですが、5、6年ぐらい前から、また本格的に始めました。今度はプロになるという緊張感はなくて、どこまでジャズミュージシャンとしてできるか、自分に対する挑戦として始めました。今東京の自宅の近くにスタジオがあって、ピアノを借りられるので、そこで1時間とか2時間、週に何回かやっています。

でもこの2週間、なかなかスタジオがとれないんです。なぜかというと……

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2008年9月 2日 (火)

カタカナをやめれば、英語の発音は良くなる

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その8

ジェラルド・カーティスさん「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」出版記念セミナー ジェラルド・カーティス: 日本人がかわいそうだと思うのは、カタカナがあることです。少なくとも小学校、中学校の英語の時間は、絶対にカタカナを禁止すべきだと思います。牛乳=milkを頭の中でカタカナで「ミルク」と思ったら、絶対に正しく発音できません。カタカナは、日本人が外国語をしゃべる大きな障害になっているのです。

私の知っているある財界人は、アメリカで講演をすることになったとき「スピーチをどうしても英語でやりたい」とスタッフに言って、英語のスピーチを書いてもらって、全部カタカナに直してもらって、それを読み上げました。すると、そこにいたアメリカ人は、みんな同時通訳のイヤホンをつけました。日本語をしゃべっていると思ったんです(笑)。……

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2008年8月25日 (月)

「難しい」日本語。No.と言わずにNo.と言う価値観

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その7

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 言葉というのはその社会にある価値観を反映するものですし、日本語の複雑さもあって、外国人から見ると、非常に誤解されやすいことも多いのです。例えばつい最近まで、よく意味が分からなかった日本語があります。

例えば「難しい」という言葉です。これはすごくいい言葉ですね。講演を頼まれて、やりたくないとき、「いやあ、ちょっとできません」と言うと、相手は非常に気分を悪くするし衝突するわけです。「本当にできませんか?」と、しつこく聞かれることがよくあります。最近分かったのは、そういうときは「できればやりたいのですが、ちょっと難しい」と答えると、すぐ諦めてくれるんです(笑)。

要するに衝突しない、No.と言わないようにNo.と言う、これが日本の価値観であって、言葉に表れています。

また、これは初めて日本に来たときの経験ですが……

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2008年8月14日 (木)

日本語には音楽のようなリズムがある

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その6

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 国際交流基金のおかげで私は日本語の勉強をすることができたのですが、実は、日本の勉強をしたらいいか、中国の勉強をしたらいいのかわからなかったので、もう1人のゼミの先生、中国の専門家に相談しました。

すると「今のアメリカにはおろかな面があって、とにかく中国を認めていない。国交が正常化していない。だから中国の勉強をしても遠くから見ることしかできない。しかし日本を勉強すれば、日本に行って日本人と直接会うことができる。あなたのような性格の人はフィールドリサーチをした方がいいので、日本のことを勉強した方がいいのではないか」と勧めてくれたのです。

その夏から日本というか、日本語を勉強し始めました。私が最初に魅力を感じたのは、日本の政治ではなくて……

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2008年8月 4日 (月)

防衛にはハード面の軍事ではなく、ソフト面の交流が必要

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その5

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 私は大学で音楽家になるのを諦めて、社会科学を勉強して、それでコロンビア大学の大学院に来ました。あのころは、地図で日本がどこにあるか示すこともできなかったぐらい、日本のことは何も知らないし、特に興味もありませんでした。

1年間、コロンビア大学の大学院でマスターコースだけやろうと思ったのですが、1年生で、国際政治のゼミをとらなければなりませんでした。先生は2人いたのですが、たまたま2人ともアジアの専門家で、1人が日本の専門家、モーリー先生で、もう1人は中国の専門家のボーグ先生でした。2人のゼミをとったのですが、何を勉強すればいいのか分からなかったから、モーリー先生に聞きました。そうしたら「戦前の最後のアメリカ駐日大使、10年間日本にいたジョセフ・グルー大使について論文を書きなさい」と言われました。それが私の日本研究の始まりでした。

そうして書いた論文が、ときどき何も知らない人の方が新鮮な見方をすることがあるからでしょう、モーリー先生から見れば面白いということになって……

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2008年7月25日 (金)

深刻な頭脳流出

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その4

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 安倍晋三さんは「再チャレンジをやるべきだ」と言いましたが、彼が言っているのは、「メーンストリームから離れた人がもう一度そこに戻って、オーソドックスな生活がきちんとできるように」ということだったと思うのです。フリーターはもっとまじめになりなさい、まじめになるならそのチャンスを与えましょう、と。アメリカの場合はそうではなくて、好きなことをするチャンスをいくらでも与える。こういうよさがあります。

日本では「今の若者はだめだ」とよく言われます。年をとった人たちが「若者はだめだ」と言うのは世界共通ですが、私はそうは思いません。「若い人たちがだめだ」と言うなら、若い人たちを育てた親、その大人たちはもっとだめだということでしょう。だから「若い人たちはだめだ」と日本人の友だちが言うと、「いや、我々自身がだめだ」と言わないとだめだと私は思うのです。

「若い人たちがだめ」というよりも……

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2008年7月17日 (木)

アメリカ社会の強さは、「遅咲き」を許す力にある

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その3

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 私が日本の専門家になった過程を考えると、日本でもこういうことは全くないわけではないのですが、非常にアメリカ的な話だと思います。学者、特に一流といわれる大学の先生というと、多分、多くの日本人から見れば、人間のタイプが大体決まっていると思うのです。まず、勉強が好き。子どものころから試験が上手で、受験のために一所懸命勉強をして東大とか京大とかいい大学に入って、先生に注目されて、学者になってと。何よりも勉強が好きで、頭がよくて、ガリ勉……多分、こういうイメージが強いと思うのです。

私は日本に学者の友だちがたくさんいますが、大体学者というのは、そういうものなのです。というのは、例えば日本の二流、三流といわれる大学を出て、それからどこかの大学院に入って、東大の先生になるということは非常に難しい。例外中の例外です。ただ、そうしたことはアメリカには結構あることで、私が日本の専門家、学者になったプロセスを考えると、多分、日本にはなかなかないプロセスだったと思います。

私は勉強が嫌いでした。今でも……

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2008年7月 9日 (水)

拉致問題に固執する日本は、世界から孤立する

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その19

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 時間をちょっとオーバーしそうですが、北朝鮮の話をします。北朝鮮には16年振りに行ったのですが、そこに住んでいる国民があまりにもかわいそうという印象を持ちました。みじめな国なんです。ひどい独裁政権でカルトなんですね、金日成カルト。色がない国です。着ている洋服がグレーか黒。カラフルなものを着ている人はほとんどいません。道を歩いている人はすごく多いけど、誰もしゃべらない。笑っている人を見たことがありません。本当に暗い国なんです。

平壌の飛行場に着いて驚いたのは、1日に2便しかないんです。着いた日に我々が乗っていたベイジンからの飛行機と、ロシアのウラジオストクからの飛行機が往復する、それだけ。帰る日にベイジンに行く僕らが乗った飛行機と、中国の瀋陽(しんよう)に行く飛行機、それだけ。ほとんど経済が動いていない。

北朝鮮の政権は、今、何とかしないと本当に崩壊するという危機感を抱いています。16年前にはなかった危機意識を、今回すごく感じました。何とかアメリカと仲良くしたいというのが北朝鮮の本音だと思います。

日本にとっての問題は……

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2008年7月 7日 (月)

中国が目指しているのは「超大国」。「経済大国」ではない!

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その18

ジェラルド・カーティスさんのライブラリートーク ジェラルド・カーティス: この前、中国のある戦略研究所に呼ばれて行きました。胡錦濤が5月に日本に来る前に、日中関係について私の意見を聞きたいということで、2日間レクチャーをしてきました。

その間、彼らも本音を出していました。私が今回あらためて思ったのは、今、中国は軍事予算を毎年17、18%増やしていますが、これは台湾の問題があるからではないのです。中国はアメリカに並ぶ超大国になるという長期戦略を持っています。

昔、1983年に鄧小平に会ったことがあります。台湾問題について聞いたときの、彼の返事が非常に印象的でした。「これは50年は掛かる、いや、100年掛かるかもしれない。けど、いずれ台湾は中国に戻ってくる」と。鄧小平の時間の概念は……

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2008年7月 3日 (木)

日本を勉強して45年。変化し続ける日本はおもしろい

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その2

ジェラルド・カーティスさん「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」出版記念セミナー ジェラルド・カーティス: この本『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』を書いた理由は、非常に単純なことです。「どうしてあなたは日本の専門家になったのですか?」と、もう何回も聞かれたのですが、その返事が案外難しい。簡単に説明できないので、それを説明しようと思ったのが、理由の1つです。

また、その説明によって、日本の特徴、アメリカと日本の違い、日本のよさと問題点といったものを表すことができるのではないかと思ったのです。ですから、なぜいわゆる知日派、日本の専門家になったのか、その返事をこの本に書きました。

もう1つよく聞かれるのは、「45年も日本のことを勉強して退屈しないですか?」という質問です。なぜ退屈しないのか……

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2008年6月30日 (月)

オバマなら、中東やアフリカから評価される国にできる

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その17

ジェラルド・カーティス: もう1つ駄目だと思うのは、「どうしてもワシントンで働きたい」という人たちがいるのです。そのために、いろいろな運動をする人が非常に多いのです。カーター政権にいた人たち、70年代後半に活躍した人たちが、今度ヒラリーになったら、またワシントンに戻ろうとしています。嫌ですね。やはりジェネレーションチェンジが必要だと思います。

オバマになれば、専門知識を持っている年配の人を何人かは使うと思いますが、もっといろいろな若い人たちを連れてくると思います。オバマは民主党によくある意識とは違うものを持っています。オバマのような人がもっとたくさんワシントンに行けばいいなと思います。そういう観点からしても、この選挙はすごく面白い。

おそらく2、3週間のうちにアメリカに初めての黒人、アフリカン・アメリカンが公式に大統領候補に決まるでしょう。一番みんなが心配しているのは……

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2008年6月25日 (水)

本を日本語で書いたのは、日本語でしか考えられないことがあるから

「政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年」その1

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: この本『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』はタイトルからして、ちょっと変わった本だなと、みなさんお思いではないでしょうか。この本には、政治学者として40数年前から日本のことを観察して勉強した話を書いている面と、昔のことを思い出しながら書いている面があります。

23歳のときに初めて日本に来て、西荻窪の四畳半のお風呂のない部屋に住んで、毎日銭湯に通って、近くの大衆食堂で食事をしました。夫婦でやっていたその食堂に行くたびに、マスターが「今日はこれを食べなさい」と言って何か出してくれるのです。何を出されているのか分からなかったのですが、ただ、おいしかった。それが「秋刀魚」であったとか、そういう昔のことを書いていたりしています。それが、本のタイトルの意味なのです。昔のことを思い出すと、不思議なほどに食べ物ばかりを思い出します。

本を書くというプロセスは非常に面白いのですが、私が書くのは大抵、日本の選挙や政治のことなど非常に硬派な学問書で、その場合はテーゼがあって、いろいろなことを調べて、資料を使って書いていきます。専門家しか手に取らないような本をたくさん書いてきたのです。

この本はそういう学術論文ではなくて……

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2008年6月23日 (月)

官僚制度も悪くない!? 政治任命すると官邸機能が麻痺する

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その16

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 私は子どものころから民主党支持です。アメリカでは、宗教と、支持する野球チームと、支持する政党が、大体子どものころに決まります。ニューヨークだったら野球はヤンキースかメッツ。私は「ブルックリン・ドジャーズ」のファンですが……。今は「ロサンゼルス・ドジャーズ」になっていますが、私が子どものころ、ドジャーズはブルックリンを本拠地にしていました。私はブルックリンに住んでいましたから、やっぱりブルックリン・ドジャーズのファンです。それと、私はユダヤ人ですが宗教も決まっています。あと、民主党の家だったんです。両親が民主党支持者で、自然に私もそうなりました。

最近はそういう流れから離れてインディペンデントになっている人も多くなっているのですが、日本と違って、子どものころからその家が民主党の家か共和党の家か、大体決まっていて、それでアメリカの政党政治は安定しています。

民主党は弱者や恵まれていない人たちを支持基盤にしているのに、中枢部には……

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2008年6月18日 (水)

政治家にとって一番大切なのは、経験ではなく希望

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その15

ジェラルド・カーティス: 3年前からここ、アカデミーヒルズで講演していますが、来年(2009年)、4年目の講演をするときは、オバマ政権の話ができることを期待しています。彼が大統領になると一番いいことは、国民に新しい希望を与えるということです。希望を与えるというのは、政治家にとって一番重要なことです。

そういう意味では、小泉さんはなかなか立派な政治家でした。「リスクをとってやれば、絶対によくなるんだ」と宣言することで国民の支持を得た、これは大事なのです。福田さんは、もっと希望を与えるようなことをやらないと。

オバマさんは国民に希望を与えたことで、若い人たちや黒人だけでなく、最近ではヒスパニックの支持も結構増えてきました。アメリカの格差問題、貧困問題は日本よりものすごく大きいんです。最近、日本の改革の必要性を主張する方のなかに……

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2008年6月16日 (月)

テロが起きたら、マケインが勝つ

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その14

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: マケインが勝つ可能性もあります。民主党の候補者争いでヒラリーはたぶん負けると思いますが、その戦いの中でオバマに対する疑問が非常に多く出てくると、やはりオバマは無理だということになります。

バラク・オバマが大統領候補者になるのは、日本でいえば、しばらく県会議員をやった人が衆議院議員になって3年目で総理大臣になるようなものなのです。彼はワシントンの上院議員になってまだ3年、1期目です。安倍晋三は経験がなかった、大臣は官房長官以外したことがなかったといいますが、オバマはもっと経験のない人だからリスクはあります。対するマケインは、それこそ本物のいろいろな経験を積んでいる人です。それがオバマの弱さなのですが、ヒラリーは今、そこをすごく攻撃しているのです。

経験も大事ですが、トップリーダーは人格が一番重要だと私は思います。オバマはアメリカの多民族を象徴する人です。お父さんがイスラム、お母さんがクリスチャン、お父さんがアフリカン、お母さんが白人、育ったのがハワイ、インドネシア。すばらしいことだと思います。

アメリカの政治家が演説するときによく言うのは……

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2008年6月12日 (木)

マケインには、21世紀の外交を任せられない

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その13

ジェラルド・カーティス: この20年間のアメリカ大統領の顔を見ると、ブッシュ4年、クリントン8年、ジュニアブッシュ8年……20年間、ブッシュかクリントンだったでしょう。ブッシュ、クリントン、ブッシュときて、またクリントン? おかしいですね。

みんな「日本の政治はおかしい」とよく言うのですが、アメリカも相当おかしい。同じ家族がずっと24年も28年も大統領になるなんて、民主主義国といえるのか、と思ってしまいます。もしもヒラリーがビル・クリントンの奥さんではなく、立派な女性で、自力ここまで来て大統領選挙に出たとなれば、また話は違うと思うのですが、やはりビル・クリントンの奥さんだから、こうなれたんです。

旦那の浮気を耐えたのが偉いとか、80カ国回っているというのは、あれはビル・クリントン大統領の奥さんだったからです。奥さんでいろいろなところに行ったのを「外交の経験がある」とPRされると……

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2008年6月10日 (火)

ヒラリーを強く支持しているのは、45歳以上の女性

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その12

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: ヒラリーが強いのは、ヒスパニックとブルーカラーの白人です。オバマは黒人と、教育水準の高いプロフェッショナルの人たちからの支持が圧倒的に高い。年齢層では、ヒラリーはお年寄りたちの支持が、オバマは若い人たちの支持が多い。

面白いのは女性です。女性のヒラリー支持者は非常に多いのですが、ただそれは45歳以上の女性に限ります。今までの予備選挙を全部合わせてみると、大体投票する人の60%が女性で、40%が男性でした。こういうことは今までありませんでした。女性の投票参加が男性より多く、その女性の60%以上がヒラリーを支持しています。ただ、それは中年以上の女性で、若い女性はそんなにヒラリーを支持していません。

考えてみれば当然です。私には娘が2人いるのですが、2人とも仕事をしていて、「才能があって頑張れば男に負けない、同じチャンスがある」と思っています。今の若い女性たちは……

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2008年6月 9日 (月)

オバマに可能性が出てきた! アメリカ社会の変化の兆し

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その11

ジェラルド・カーティス: ただ、びっくりすることにアイオワという、黒人を見たことがないと思うくらい白人の多い州、黒人人口は多分2、3%という州の党員集会で、オバマが勝ったんです。その次のニューハンプシャーの予備選挙ではヒラリーが勝ったのですが、接線でオバマが結構いいところまでいきました。「ひょっとしたら、白人社会が顔の黒い人を支持する可能性があるんだ」という黒人社会のこのときの興奮状態は、大変なものでした。

次にサウスカロライナとジョージアでの予備選挙が、1月の末と2月にありましたが、驚いたことにジョージアでは――『風と共に去りぬ』の舞台になった所ですね、ここでは黒人の80%、白人男性の45%がオバマを支持しました。これは、黒人だけじゃなくて、今までのアメリカの選挙を見てきた人たちにも信じられないことでした。

オバマは白人社会からも支持を得られるんだということで、ジョン・ルイスがヒラリーからオバマに転向を表明して、黒人のオバマ支持が爆発的なものになっていったのです。

オバマは黒人が非常に少ない州、例えば……

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2008年6月 5日 (木)

黒人がオバマを支持しないのは、潜む差別と共和党への拒絶感

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その10

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: アメリカの社会にはいろいろな変化が起こっています。とても面白いことを経験したのは、ニューヨークのタクシー運転手さんにインタビューしたときのことです。タクシーの運転手さんにインタビューするのが私の1つの研究の方法で、『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』(日経BP社)の中にも、タクシーの後部座席から見る日本社会の変化について書いた部分があるぐらい、私はタクシーに乗ると運転手さんにできるだけ話を聞いています。

去年(2007年)の11、12月ごろ、民主党からオバマが出る、ヒラリーも出る、共和党からはエドワードが出ると、出馬の顔ぶれが決まったころ、私はニューヨーク市内に住んでいました。ニューヨークのタクシーの運転手さんは黒人が多いのですが、1月10日ごろまでは、私が乗ったタクシーの黒人の運転手に聞いても「オバマを支持している」と答える人は1人もいませんでした。面白いことに、みんなヒラリーでした。……

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2008年6月 4日 (水)

ヒスパニックの増加は、日本の自動車メーカーにも影響を及ぼす

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その9

ジェラルド・カーティス: ヒスパニックの中には英語が話せない人が結構います。アメリカの場合は英語を公用語として定めていないので、テキサスとかカリフォルニアではバイリンガル・エデュケーションをやっています。非常に残念だと思うのは、そういう所では子どもが英語を覚えなくても何とかなってしまう、学校を卒業できてしまうのですが、プロフェッショナルになるには、すごいハンディーキャップになるのです。

『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』(日経BP社)は私の自伝的日本人論というような本で、自分のことをだいぶ書いているのですが、私の親父はウクライナから10歳のとき、アメリカに移民しました。英語が全然話せなかったので、学校では小学校1年生にさせられました。前に親父に聞いたのですが、一番悔しかったのは体育の時間で、小さい子どもと一緒にやるのがすごく恥ずかしかったそうです。一所懸命勉強して、飛び級して、最後には同じ年齢の人たちと一緒に高校を卒業することができましたが、苦労したのです。

今、そういう苦労をするアメリカ人はいません。移民者に対して優しいのです。例えばニューヨークでは……

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2008年6月 3日 (火)

オバマとヒラリーの支持基盤は、こんなに違う

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その8

アカデミーヒルズ六本木ライブラリー「ライブラリートーク」の様子 ジェラルド・カーティス: 民主党は1つの政党ですが、その中にはいろいろな対立する、少なくとも意見が違うグループがたくさんあります。それが普通の姿です。日本の自民党や民主党には「統一した意見や政策がない、統一したポリシーがない」といいますが、どの国もそれが普通です。

ヒラリーの支持基盤とオバマの支持基盤は随分違います。ここでもアメリカの社会のいろいろな面白い現象が見られます。

誰がヒラリーを一番支持しているのかというと、1つは先ほど少し触れましたがヒスパニックです。アメリカでもまだそれほど知られていないのですが、今、アメリカで一番人数の多いマイノリティ・グループは、黒人=アフリカン・アメリカンではなくヒスパニックです。アメリカの人口の15%がヒスパニックで、12%が黒人です。ヒスパニックの人口は約4,600万人ですが、1990年から去年(2007年)にかけて倍になりました。ものすごい勢いで住民が増えています。ヒスパニックの多くはメキシカンです。

そのヒスパニックの人たちの半分が、2つの州に住んでいます。一番多いのは……

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2008年6月 2日 (月)

ヒラリーが嫌われる理由。このままでは民主党が自滅する

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その7

ジェラルド・カーティス: 私は、今回は共和党ではなく絶対民主党に政権をとってもらいたいと思っています。ですが、民主党支持者の54%は「ヒラリーは嫌だ」と言っているということが、最近の調査で分かったのです。

なぜかというと、「自分がいかにいい大統領になれるか」を国民に説得するのではなくて、「オバマは駄目だ」という話ばかりして、足を引っ張ろうとするからです。今の状況からするとオバマが民主党の候補者になると思いますが、共和党のマケインとの戦いになったとき、マケインは間違いなく、ヒラリーが今まで言ってきたオバマ批判をそのまま使います。だから、ヒラリーとオバマの対決がこれ以上長引いたら、民主党の自殺行為につながりかねないのです。

ペンシルベニアの予備選挙は……

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2008年5月30日 (金)

JFKの再来か? 政治に無関心な人が振り向いた!

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その6

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 私がちょうど二十歳になったときに、ジョン・F・ケネディが大統領になりました。今、そのころを思い出すような雰囲気です。特にオバマに対しての盛り上がり、これはケネディに対する当時の若者たちの支持と非常によく似ています。政治にあまり興味のない人たちも巻き込んでいます。

例えば、日本時間の明日(4月17日)の朝、アメリカの火曜日夜にヒラリーとオバマのディベートがペンシルベニアで行われるのですが、この視聴率は大変なものになります。今までに18回ぐらいディベートをやっているのですが、見る人が多く、予備選挙に投票する人たちは4年前の倍以上で、ものすごい盛り上がりを見せています。

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2008年5月28日 (水)

日本の現職政治家が恐れる「インターネット革命」

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その5

ジェラルド・カーティス: 時間より、さらに掛かるのは「お金」です。日本は金権選挙だといいますが、アメリカと比べればかわいいものです。もう既にヒラリーとオバマは予備選挙で500億円を使っています。たぶん11月までに1,000億円が使われるでしょう。ものすごい金額です。でも、「お金が掛かり過ぎるアメリカの選挙を何とかしなければ」という意見が少ない。「こんなにお金が掛かるのはいいな」というのが、今のアメリカでの多い意見です。

なぜでしょう? このことをお伝えすれば、すぐお分かりになると思いますが、2月の1カ月間だけでオバマは5,000万ドル(約50億円)を集め、ヒラリーは3,000万ドル(約30億円)集めました。1カ月間ですから、大きい額です。オバマはこの5,000万ドルを780,000人から集めたのです。5,000万ドルを寄付した人たちの90%は100ドル以下、50%は25ドル以下、80%の寄付がインターネットで行われました。要するに、何万人もの人が2,000円とか5,000円、10,000円ぐらいの額を寄付しているのです。

一般国民が政治参加できるのは、投票することと……

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2008年5月27日 (火)

民主主義国家らしくない党員集会

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その4

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: また、党員集会については、「秘密投票ではなくて、民主主義ではないのではないか。党員集会をやめて、全部選挙にすべきだ」という話が去年(2007年)の終わりごろまであったのですが、今は、「いや、この党員集会もなかなかいいな」という意見が多くなっています。

なぜかというと予備選挙をやる場合、候補者が演説をします。オバマが演説をすると野球のスタジアムに2万人も3万人も集ります。ヒラリーもそうです。日本の政治家、総理大臣みたいに、官僚が書いたペーパーを頭も上げないでずっと棒読みするようなことはしません。アメリカの政治家は国民を説得するために、すごく努力して、演説を練習します。

福田さんがこの前、ダボス会議に1日だけ行って演説をしました。もちろん日本語で。だから通訳をつけなければいけない。ほかのほとんどの国の指導者は英語を話せるのですが……

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2008年5月26日 (月)

オバマが躍進できたのは、複雑な選挙のおかげ

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その3

ジェラルド・カーティスさんのライブラリートーク ジェラルド・カーティス: このめちゃくちゃな、非合理的な制度を変えるべきだという意見が、今、ほとんど出ていません。みんな大賛成で、私も以前と比べたら今はそれほど反対していません。理由は……どなたか会場の方、分かりますか? 非常に面白い現象なんです。

アメリカの予備選挙というのは、時間ばかり掛かります。1月に始まって、アイオワの党員集会とニューハンプシャーの予備選挙で幕を開け、6月の半ばか終わりごろまで続きます。民主党はサウスダコタ州が最後の予備選挙ですが、選挙の準備は1年以上前からやっていますし、特に予備選挙の半年間はものすごくお金を使います。エネルギー、体力も使います。オバマもヒラリーも毎晩ぜいぜい3時間か4時間ぐらいしか、おそらく寝ていません。

「アメリカのシステムでは長すぎる」という意見が強かったから……

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2008年5月22日 (木)

複雑なアメリカ大統領選挙の仕組みを簡単に説明します

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その2

『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』 ジェラルド・カーティス: 私の本『政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年』(日経BP社)の中で、40年にわたって見てきた日本のことを書きましたが、今日はアメリカの大統領選挙の仕組みと、ヒラリーとオバマの選挙運動から見るアメリカの社会の変化、そして日米関係の話をします。

日本の新聞・テレビも、アメリカの大統領候補者を選ぶ仕組みを随分取り上げていますが、多分この部屋に、このシステムを完璧に分かっている方は1人もいらっしゃらないと思います。私がそう自信を持って言えるのは、このシステムを分かっているアメリカ人もほとんどいないからです。あまりにも複雑で非合理的でめちゃくちゃで、訳が分からない。州ごとにやり方が違う、党のやり方も民主党と共和党で違う、アメリカ政治の専門家たちも選挙制度の専門家たちも、ちゃんとは分かっていません。

例えば……

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2008年5月21日 (水)

オバマは黒人に対するアメリカ社会の意識変化をもたらした

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」その1

ジェラルド・カーティスさん ジェラルド・カーティス: 私は今、1年のうち半年をアメリカ、半年を日本で過ごすという生活をしています。ベースの半年は東京ですが、特に今年はアジアを走り回っています。

実は先週の火曜日に中国に行って、水曜日に中国の北朝鮮の専門家、特に共産党の情報部と話をしました。そして木曜日はピョンヤンに飛んで政府の高官と話をして、土曜日に東京に戻ってきました。昨日は国会議員30人ぐらいと超党派で北朝鮮の話をしました。これはちょっとホットな話で、アメリカの政治にも日米関係にも非常に関係のある問題なのですが、北朝鮮に対してアメリカと日本では対応にずれがあります。

ですから今日はちょっと欲張って、アメリカの大統領選挙と、日米関係と、中国のこれからの台頭に対して日本とアメリカはどうすればいいのかといったこと、さらには……

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ジェラルド・カーティス プロフィール

ジェラルド・カーティス ジェラルド・カーティス(Gerald L.Curtis)
コロンビア大学教授

1940年ニューヨーク生まれ。1962年ニュー・メキシコ大学卒業。1964年コロンビア大学修士課程終了。1969年同大学博士号取得、1968年からコロンビア大学で教鞭をとり、現在コロンビア大学政治学教授、早稲田大学客員教授。1973年から91 年まで、コロンビア大学東アジア研究所長を12年間務める。慶応大学、政策研究大学院大学、コレージュ・ド・フランス、シンガポール大学など客員教授を歴任。中日・東京新聞の客員及びコラムニストのほか、新聞、テレビなど内外のマスコミで活躍。

三極委員会委員、米外交評会委員、米日財団理事。大正正芳記念賞、中日新聞特別功労賞、国際交流基金賞、旭日重光賞を受賞。

主な著書に『代議士の誕生』、『日本型政治の本質』、『日本政治をどう見るか』、『永田町政治の興亡』、『政治と秋刀魚』など。

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