講師:安部修仁

2008年5月13日 (火)

会社更生で学んだこと

『危機を克服して進化する吉野家流経営~「吉野家ウェイ」に見る現場を活かす価値追求マネジメント~』その5

安部修仁 安部修仁: 1980年に会社更生手続きを申請し、83年に更生計画が認可されて再スタートを切りました。それまでは典型的な急成長の企業体質でした。経営指標で最も重視するのは成長性。意識のほとんどを成長性に向けていました。その結果、だんだんとクオリティが劣化し、財務にも無理が生じたのです。会社更生法による再スタート後は、債務を債権者に返済することが事業目的になりました。安全性を最優先する経営になったのです。急成長から安全性へ――対極から対極への変化でした。

それまでは企業の拡大が個人の成長を促すと考えていました。拡大路線で突っ走る企業についていく過程で、人材としての能力が高まる、と。だから、例えば1年間に50店舗や100店舗など出店ありきで動いていました。その際、売上予測や家賃交渉などは二の次でした。そのため一つひとつの質がおろそかになってしまい、その結果、赤字店舗が増えてしまったのです。

最優先事項を安全性に切り替えてからは、出店ありきで行動することはできなくなりました。なぜなら債権者が……

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2008年5月 8日 (木)

アメリカ牛にこだわったのは、お客さまの期待を裏切らないため

『危機を克服して進化する吉野家流経営~「吉野家ウェイ」に見る現場を活かす価値追求マネジメント~』その4

安部修仁 安部修仁: 「うまい、やすい、はやい」は、吉野家の個性になっています。これは、吉野家の価値構成要素の1つであると自負しています。このうち「うまい、はやい」の2つは、築地で生まれました。築地は味にうるさい食のプロが集まっているし、1分1秒を争って仕事をしているのでスピードに対するニーズも高かったからです。

「来店頻度主義」にも関わることですが、おいしさの中で私たちが最も重視しているのは「後味」です。繰り返し食べても飽きない「後味」にしています。タレは手間隙掛けて作っていますが、タレの原液だけを飲んでもおいしくはありません。牛丼の味は、タレと、牛肉と玉ねぎから出るジュースが混ざり合って生まれるものです。詳しくは言えませんが、タレと牛肉と玉ねぎの配合量など、様々な要素が合体してはじめてあの味になるのです。

BSE騒動のとき、アメリカ牛にこだわったのは……

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2008年4月21日 (月)

売上1割増を達成する方法

『危機を克服して進化する吉野家流経営~「吉野家ウェイ」に見る現場を活かす価値追求マネジメント~』その3

安部修仁 安部修仁: 吉野家では、「客数主義」を、社会における存在感やマーケットに支持されているかどうかを計るバロメーターにしています。客数という数字で実感することで、自己満足に陥ることを防止しているのです。そのため、1日500人以上の客数をもって、繁盛店と定義しています。客数の経時変化が同業他社の平均よりも高い伸び率になっていれば、マーケットに適応していると見なします。社会における存在意義・価値は、延べ客数で判断します。

「来店頻度主義」は、売上を上げるときの重要な考え方です。例えば1日の来店者数が1,000人の店が売上1割アップを目指す場合、来店者数を1,100人にすればいいわけです。このとき、新たな100人にアプローチして新規顧客を増やす方法もありますが、私たちはその方法は取りません。

なぜか?……

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2008年4月14日 (月)

「客数主義・来店頻度主義」は、築地で生まれた事業化戦略だった

『危機を克服して進化する吉野家流経営~「吉野家ウェイ」に見る現場を活かす価値追求マネジメント~』その2

米倉誠一郎_安部修仁 安部修仁: とことん突き詰めて探求するという吉野家独自の習慣は、実質的な創業者の松田瑞穂が生み出したものです。これは現在、外食産業において価値を生み出していくうえで、吉野家の重要なメンタリティになっています。この習慣の背景には、単品経営をずっと行ってきたということがあります。日々の改善の連続性のうえに価値がつくられるということです。

外食産業の常識に、「商品はお客さまに飽きられる」、だから「ラインナップを増やす、変える」というものがあります。しかし吉野家では「商品を飽きさせないものにする」「いかにして飽きさせないか」を追求しています。これは、外食産業においては「吉野家の非常識」と言われるかもしれないものですが……

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2008年4月 9日 (水)

値下げしても、味と品質を保ち、利益も守った「吉野家ウェイ」

『危機を克服して進化する吉野家流経営~「吉野家ウェイ」に見る現場を活かす価値追求マネジメント~』その1

安部修仁 安部修仁: 今回のテーマは「危機を克服して進化する吉野家流経営」ということですが、進化したかどうか結果の成否が出るのは短いレンジでも3年後、普通は10年後です。従って私たちが今やっていることが有効かどうかは、これから分かることです。しかし、私たちは「有効だ」というつもりで、現在様々なことに取り組んでいます。

今日は2つのことをお話します。1つは「吉野家ウェイ」の解説、定義、想いについて。もう1つは「現場を活かす価値追求マネジメント」に対するスタンスについてです。また、この2つを歴史的に実践してきた事実もダイジェストでお伝えします。

まず、「吉野家ウェイ」について。これはアカデミーヒルズの事務局の方が、私たちの行動指針に対してつけた言葉です。私たちが普段使っている言葉ではありません。私は社内の人間には、こんなメッセージにして伝えています――創業以来、試行錯誤を重ねて牛丼を作り続けてきたことで獲得したナレッジがあるはずだ。それは吉野家固有のナレッジで、吉野家の様々な分野に活かすべきだ――と。

私がもし吉野家の人間ではなくお客さまの立場であったなら……

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安部修仁 プロフィール

安部修仁 安部修仁(あべ・しゅうじ)
株式会社吉野家ホールディングス 代表取締役社長

1949年福岡県生まれ。プロのミュージシャンを目指し上京。音楽活動の傍ら、株式会社吉野家でアルバイトとして勤務。その後、音楽の道を諦め、正社員として吉野家入社。77年には九州地区本部長を務め、同社倒産後の83年には取締役として経営参加。88年常務取締役、92年代表取締役社長に就任。2007年のグループ改組後、現職。

株式会社吉野家ホームページ

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