
―第2部「日本は変われるのか」―
竹中平蔵: 第1部はマクロ経済に焦点を当てたわけですが、ここから構造改革、日本をどうしていくかという観点から、自由に幅広く議論をしていただきたいと思います。この壇上に乗っておられるのは先ほどと同じ、私の方から見て、フェルドマンさん、そして中央大学の野村先生、元の産業再生機構のCEOの冨山和彦先生、よくご存知の加藤寛先生、以上、ポリシーウォッチのメンバーですが、きょうは特別参加でさらにお2人をお招きしております。
その隣は、松原聡東洋大学教授でいらっしゃいます。松原さんは、民営化された日本郵政の社外取締役として、大変改革に辣腕を振るわれているというのと、総務省の放送・通信の融合の、まさに松原委員会の座長を務められてきたわけであります。そして、これまたご承知の木村剛さんでいらっしゃいます。木村さんは、まさに不良債権処理のときの立役者で、私たちの不良債権チームの中心的なメンバーであらせられました。
それでは早速始めたいと思いますけれど、日本の現状、最初にフェルドマンさんから、簡単に問題の提起をしていただいて、そして議論に入っていきたいと思います。フェルドマンさん、お願いします。
ロバート・フェルドマン: 問題提起という点ですが、まずどういうふうにこの問題を分析するかということに関して、簡単に私がここ10年ぐらい使っているやり方を紹介したいと思います。
これはCRICサイクルというものです。CRICというのは……
英語の頭文字ですけれど、私の説明が終わりましたら、なぜCRICという言葉を使っているかわかると思います。まずどういうことを基準にして考えて いるか、軸にしています。成長率が横軸、改革速度が縦軸です。なぜこの2つを使うかというと、横軸の成長率は経済がどうなっているかということを表す変数 です。いわゆる状況変数です。縦軸が改革ですけれど、これは、「どうすればいいか」という変数ですから整合変数です。改革を早めるべきか、遅くするべき か、そういう変数です。この2つで考えようということが1つです。
では、この2つの関係はどうなっているかということですが、実は2つの関係があります。1つは、いわゆる経済反応曲線、すなわち成長率は改革をすれ ばどれだけ変わるかということです。計算しにくいのですけれども、右上がり、時間はかかりますけれども、改革をすれば成長率が上がりますという関係です。
1つの例ですが、十数年前、携帯電話はNTTさんから国民が借りていたのです。自分で持つということは禁止されていたのです。それが改革されて、自 分で持っていいということになったら、ちょっと時間はかかりましたけれど、経済成長がガーンと上がりました。そういう関係です。改革をすれば時間がかかる けれど、成長率が上がりますという関係、これが1つです。
次は改革反応曲線です。これは改革をやる人たちの行動を表します。すなわち政策をつくる人です。みんな人間ですから、怠けてしまいます、成長がよくなって
きますと、どうしても改革が鈍ってきます。ここ1、2年のことですが、これは右下がりで負の関係です。やはりみんな怠けてしまいます。すぐ怠けてしまう、
この時間のずれがほとんどないということが、1つのポイントです。
では、この2つを合わせてみましょう。時間のずれがありますから、仮に例えば外需が大きく増えて、一番右側にあるA点にいったとします。そうすると 成長率が高いです。「成長率が高いから、改革をちょっと少なくしよう」という気持ちになると、AからBに行き、成長率は下がります。成長率が下がった結 果、「ああ、どうしよう」ということになりますから、改革が加速してBからCまでいきます。 改革をやった結果、成長率がまた上がっていってDあたりに行き、グルグル回っていきます。これは日本の90年代の経験、何度もあったサイクルだと思いま す。
※この記事は、2008年1月4日にアカデミーヒルズで開催したパネルディスカッション「政治経済の混迷を斬る ~“竹中チーム”再結集~ at アカデミーヒルズ」の全文掲載です。全29章中の第10章に当たります。
※当日使用した資料は、「チーム・ポリシーウォッチ」のサイトで公開されています。
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