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2008年4月30日 (水)

経済の実態、物事の本質を見ていない日本人

「政治経済の混迷を斬る ~“竹中チーム”再結集~」その17
―第2部「日本は変われるのか」―

木村剛 竹中平蔵: 最後になりましたけれど、木村さん、よろしくお願いします。

木村剛: すでに論点は出尽くした感があると思うのですが、私はあえてチャレンジしますと、フェルドマンさんの言われたCRICサイクルというのは、もう終わっていると思うのです。何が終わっているかというと、フェルドマンさんの説によれば、危機が起こると反応が起こって改善が起こる? ありません、無理です(笑)。

それはなぜか、それは危機が起こっても危機と感じないような体質になってしまったのですね。先ほどの第1部では「経済学を知らないから」というお話があり、それも確かにあると思いますが、恐らく「経済の実態を見ていないから経済学の使い方がわからない」というのが、今の日本経済の実態ではないかと思います。

私はどうしても金融畑なものですから、そういう観点からものを見てしまいがちなのですが、最近何を語るにも「サブプライムローン問題」です。日本経済の先行きも「サブプライムローン問題」、「サブプライムローン問題で世界の金融が収縮する、信用収縮が問題だ」という馬鹿なことを言っている方がたくさんいるんですね。冷静に見てください。……

確かにアメリカのホームエクイティローンは去年の1月の前年比は5.8%、それが直近では2.1%、確かに減速している。不動産も+15.1から+7.1、減速しています。

じゃあ、アメリカで法人企業向けの貸し出し、どのぐらい伸びているかご存知ですか、昨年の1月は14.0%、足元は18.5%と2割近く伸びてい る。では、ヨーロッパはどうか。ヨーロッパは13.7%、日本はどうか、去年の1月は+1.5%伸びていました、足元は-0.3%です。

サブプライムローンなんかを心配している暇はないんです、アホかと。アメリカの心配をしている暇があったら、もうちょっと日本の中身を心配しなさい。要するに実態を見ていないんですね。だから変な議論がものすごく横行するわけです。

私は最近、中小企業とか零細企業とか個人事業主の社長の方とよくお話をするのですが、格差の象徴は何か、必ず聞くんですね。
「社長、ネットカフェ難民、どう思われますか?」と。
「ふざけんな」。9割方の人はこう言うんです。
「いや、彼らは非正規でかわいそうです、宿もないんです」
だいたいの社長はこう言います。「あしたからうちの会社に来い、あしたから正社員だ。工場に住むところもつくってやる、だけれど年収は落ちるよ」と、こういうことなんです。

皆さん、ネットカフェに泊まられたことはありますか? 1日1,500円ですよ。シャワー浴びたら2,000円です。30日住むんですよ、月 60,000円かけているんですよ。吉祥寺に住めますよ。なぜそういう冷静な議論ができないのか。もう歪んでしまっているからですね。歪んだ実態に基づい て、歪んだルールをつくると、野村先生の言ったコンプライアンス不況になるんです。ルールが歪んでいるからおかしくなるんですね。

今回の建築基準法の改悪も、実際問題としてその典型的なものでしょう。グランドステージのヒューザーがつくった建物でつぶれたところは1つもないん ですよ。ふと隣を見ると、築60年で今にも倒れそうなやつがあるわけですね。それを議論しないで、ヒューザーの小嶋さんの顔が恐いというだけで(笑)、あ そこまでいじめたら歪みますよ、それは。そういうところ、冷静に議論しないといけない。

しかも法律の適用が非常に恣意的ですよね。ヒューザーの小嶋さんは顔が恐いから「耐震偽造」。皆さんご存知のような有名な超一流上場企業も同じようなことをやりましたよね。マスコミはどう報じたか、「鉄骨強度不足」です。「耐震偽造」ではないですね。

だから、私は小嶋さんにこう言いたい、「あなたのやったのは耐震偽造じゃないんだ、鉄骨本数不足だったね、惜しかった」と。そういうですね、くだらない議論をしていると、この国は本当に駄目になると思いますね。

※この記事は、2008年1月4日にアカデミーヒルズで開催したパネルディスカッション「政治経済の混迷を斬る ~“竹中チーム”再結集~ at アカデミーヒルズ」の全文掲載です。全29章中の第17章に当たります。

※当日使用した資料は、「チーム・ポリシーウォッチ」のサイトで公開されています。


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