
「ライフスタイルサロン ~遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』~」その11
竹中平蔵: 「ハイフニスト」というのは、すばらしい言葉ですね。私もそうありたいと思いますし、皆さんも例えば企業経営者-(ハイフン)何とかである、そういう人生であらねばならないと改めて思ったのではないでしょうか。実は、非常に若いときに私もそう感じたことがあります。
私が経済学者になったのは、日本の高度成長の設計者になられた下村治さん――池田勇人の所得倍増計画の理論的な支柱であった下村治さんに憧れたからです。その下村治さんのライバルに、吉野俊彦さんという日銀のエコノミストがいました。
この吉野さんの本に、結構おもしろいことが書かれてありました。吉野さんというのは、下村さんに匹敵する当代一流のエコノミストであったと同時に、その当時の森鴎外研究者の第一人者だったんです。こんな人がいるのかと思って……
その人のエッセイを読んでいると、自分には書庫が2つある、書斎が2つあるというのです。12時までは第一書庫にいて経済のことをやっている、12時になった途端に第二書庫に移って森鴎外の研究をする。すごいなと思ったんですけど、こんなこと普通の人はできないですよね。
あえて、特に若い世代の方々に、「若いころから、こんなことに注意して生きなさい」「こういうことをやってみたらどうだ?」というようなアドバイスがありましたら、一言お願いできますか。「そんなことは自分で考えなさい」というのも1つのアドバイスですが(笑)。
福原義春: 「ハイフニスト」という話が出ましたけれど、サラリーマン兼サーファーであるとか、あるいは銀行屋兼囲碁何段とか、そういう方はいっぱいいらっしゃいます。
今「ワークライフバランス」というのが流行語になっていますが、会社の拘束時間を下げることだと誤解されています。あるいはワークライフバランスが できてないので子育てができないと思ってしまう、それはあまりよくないのです。結果としてそういうことがあるかもしれないけれど、そうじゃなくて、会社に いて、会社の仕事をすることと、自分のために何かをやること、それをバランスさせようということではないかと思うのです。
そうなると、せっかくの余った時間をゲームだとかパチンコだとかテレビだとか、そういった時間消費的なものに使うのを少し減らして、プロダクティブ な、あるいはクリエーティブなものに変えたらどうかと思うのです。雑誌を読むことでもいいし、本を読むことでもいい。それから何か1つの研究、まあ研究と いうとちょっと大げさになるのですが――いろいろな世界がありますから、それを追求、探求するとびっくりするような世界が見えてきます。
例えば、最近の若い人たちの間で、万年筆を集めるというのが流行っているようです。万年筆のペン先というのは、だんだん突き詰めていくと、これまた 難しいんです。いろいろなタイプのペン先があって、合金もいろいろな種類があって、どういう会社がどういう経緯でそれをつくってきたかなどということを考 えていくと、これまた切りがないんです。
このように、何か自分だけのクリエーティブなことに取り組むようにすればいいんじゃないかしらと思うのです。仕事をしているといつかは定年が来てし まうわけですが、定年のときにはご自分の財産として必ず残ります。それを基礎にNPOをつくったり、発信することができるようになるのです。
この記事は、2008年1月9日にアカデミーヒルズ六本木ライブラリーで開催した福原義春氏(株式会社資生堂 名誉会長)の講演「遊びをせんとや生まれけむ『ぼくの複線人生』」(ライフスタイルサロン特別講演)の全文掲載です。全13章あり、そのうちの第11章に当たります。
【購読無料】アカデミーヒルズで開催する講座の最新情報をメールでお知らせします。詳しくはこちら >>
| 固定リンク









