講演テーマ010:「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

2008年6月30日 (月)

東証をアジア新興企業のメイン市場に

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その8

斉藤惇 斉藤惇: 東証では、わが国の豊富な資金力と株式市場の流動性を最大限に活用し、アジアの新興企業にとってのメインマーケットとして、その地位を確立していく必要があると考えています。そのために、リスクテイク能力のあるプロ向け市場に、日本を含むアジアの新興企業を対象とした、自由度の高い新たな市場の枠組みを成立させる必要があると考えています。プロ市場を創ろうとしているわけですが、必ずしも個人投資家の市場参加を否定するものではありません。個人投資家は、機関投資家というプロを通して、間接的に市場に参加して投資成果を享受していただく、いわゆる市場型間接金融の考え方です。

世界の成長センターであるアジア各国には、リスクマネーを必要とする成長性の高い企業が多数存在しています。加えて、わが国においてもエクイティ・マーケットから資金調達を必要とする企業が数多く存在します。本来のエクイティ・マーケットの役割は、銀行など金融機関が容易に融資できない高いリスクのある事業や産業に対して、長期的に技術力や成長性を見越して投資することでしょう。

一方で、日本では株主の声も強くなってきており……

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2008年6月23日 (月)

リスクアセットの選択肢が拡大

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その7

斉藤惇 斉藤惇: 世界の上場している主要取引市場の時価総額を見ると、大阪が1,400億円、香港が3兆円、シカゴが4兆円、ドイツはデリバティブですが4兆円です。東証はまだ上場していませんが、上場していてもおそらく1兆円くらいでしょう。こうした状況ですので、2007年末に金融庁が取りまとめた金融市場競争力強化プランにおいて、商品デリバティブを金融商品取引法と商品取引所法の2つの法制度の下におくことで、ようやく東証を含めた金融商品取引所が、従来の商品ラインナップを超えた幅広いデリバティブ商品を取り扱うことが可能になりました。

今まで世界では、例えば商品デリバティブの技術を使って自分の資産のリスクヘッジをかけられたのに、1,500兆円を持っている日本の個人投資家だけが、官庁同士の縄張り争いのためにそれができませんでした。金融庁のプランが実現すると、証券取引所が商品を含む広範なデリバティブを取り扱うこと、多様な投資物件を提供することが可能になる一方で……

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2008年6月16日 (月)

東証の国際化は不可避な課題

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その6

斉藤惇 斉藤惇: わが国の金融資本市場をリードしなくてはいけない東証の実体を見ると、英米をはじめとする諸外国に比べて時価総額の絶対額はニューヨークを除いては、なんとか肩を並べられる数字です。ただし、ビジネスモデル、上場商品の内容を検証すると、残念ながらグローバル化が進んでいないのが現状です。これは東京証券取引所が、あるいは東京市場がローカルな市場にとどまり、世界の経済・産業・企業の情報が集っていないことを意味しています。わが国の競争力強化の観点から大きな問題であると言わざるを得ません。

わが国の産業界では、経済連携協定の締結、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)がアジア諸国との間で進んでいて、貿易障壁を下げる方向にあります。しかし、金融面においては東証の国際化が進まなければ……

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2008年6月 6日 (金)

個人金融資産の効果的な活用が鍵

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その5

斉藤惇 斉藤惇: 1989年の東証の株式時価総額は610兆円強であり、世界一でした。当時のアメリカは370兆円、ロンドンは170兆円でした。しかし、日本が現在の400兆円に縮小したのに対して、ニューヨークは5倍、ナスダックは10倍、イギリスとドイツが約5倍に急成長しました。上海は、1兆6400万円だったのが、170倍の300兆円に膨れ上がりました。日本の世界における相対的地位が縮小しているのは厳然たる事実です。

産業と金融の健全な発展のためには、企業が新たな付加価値を創造するリスクに挑戦する力と、金融資本市場がリスクマネーやソリューションを機動的に提供していく力の2つが、相乗的に発展していく社会を作らなくてはなりません。わが国は国際競争力を持つ製造業と、1,535兆円と言われる個人金融資産の蓄積を利用して、新しい国づくりを進めることは十分に可能でしょう。

わが国の個人金融資産は……

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2008年5月29日 (木)

産業と金融で実現する日本の持続的発展

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その4

講師の斉藤惇氏と、モデレーターの竹中平蔵氏 斉藤惇: 日本の1人当たりGDPは、1993年にOECD加盟国の中で1位でしたが、それから右肩下がりを続け、2008年には18位にまで低下しました。世界経済に占めるわが国のプレゼンスの低下を如実に物語っています。

日本モデルが20年もの間、1人当たりGDPがアップしていないという歴史的な証明を受けているのにもかかわらず、産業構造を変えようとしない日本について、MITのサミュエルソン教授は「まったく理解できない」と評しています。外国からみると、20年間もフェイルした産業構造を変えようとしない民族が不思議でしかたないのです。

1990年代後半のイギリスは、先進国の中でその経済状況は最下位にあり、1人当たりGDPが17,000ドルでした。同時期の日本は35,000ドルでした。それが現在では、イギリスが37,000ドルに急成長したのに対して、日本は35,660ドルと660ドルだけ増えたのにとどまっています。……

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2008年5月19日 (月)

海外の金融機関はビジネスモデルを変革

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その3

斉藤惇 斉藤惇: このような環境変化の中で、世界的な金融市場の中心に位置してきた先進国の金融機関、特に欧米の先進的な金融機関は大きくビジネスモデルを変革させました。欧米の金融機関は自らが実行した貸し出しなどのリスクを、証券化技術などを駆使して、投資家やヘッジファンドなどの第三者に移転するビジネスモデルを開発しました。「オリジネート&ディストリビュート型」と呼ばれるモデルです。これによって伝統的な銀行のビジネススタイルが変わりました。

シティーは鵜のまねをする烏のごとく行動して失敗しました。本当のプロが居なかったのです。それにもかかわらず彼らが新型金融に突き進まざるを得なかった背景としては、資本市場の発展に伴い、従来型の金融機関が一般的なホールセール取引では、もはや利益を確保できなくなったことが挙げられます。

そうした状況の中で、海外の金融機関は高い格付けを維持するために……

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2008年5月12日 (月)

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「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その2

アカデミーヒルズで開催した斉藤惇さんの講座の様子 斉藤惇: また、M&Aファイナンスや不動産ファイナンスなどキャッシュフローを重視する新たな金融手法が普及してきました。特に強調したいのは、証券化手法が発達したことにより、実に多様な証券化商品が生み出されたことです。1980年代から今日に至る長期の経済成長の背景として、こうした金融技術の革新、金融商品の派生が非常に大きな役割を果たしたことは見逃せません。

市場参加者という観点から見ると、投資家の顔ぶれが多様化しました。ヘッジファンドあるいはプライベートエクイティファンドなどがグローバルな金融システムにおいて、重要なプレイヤーとして活躍するようになりました。最近はむしろ、ファンドの旺盛な投資需要によって、M&Aを含むさまざまな投資案件が創出されています。このように金融取引手法の発達と、さまざまなファンドの拡大により、多様なリスクを持った世界中の資金が、グローバルな金融市場をめまぐるしく駆け巡りはじめました。

最近のサブプライムローン問題は……

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2008年5月 7日 (水)

グローバル化とITの進展が経済環境を変革

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」その1

斉藤惇 グローバル化とITの急速な進展により、世界の経済や金融市場は大きく変貌しました。その中にあって日本は、かつての栄光の座から滑り落ち、グローバルなプレゼンスを弱めつつあります。日本が世界に対する発言力を取り戻し、かつ持続的に経済を発展させるには、既存の産業と金融のバランスある発展に力を入れなければなりません。そのためにも、東京を国際金融センターに育て上げなければなりません。

斉藤惇: 1990年代以降、世界の経済や金融資本市場は大きな変革を遂げました。変貌の背景のうちで特に重要なのは、グローバル化とインフォメーションテクノロジーの急速な進展です。この2つが相乗性を発揮し、さまざまな財やサービスが国境を越えて行き来するようになりました。それに伴って国際分業の進展や価格、賃金の収れん傾向が生じました。

日本では貧富の格差が問題になっていますが、国内の問題として論じていても意味がありません。中国では毎年約2300万人が低賃金で教育程度の高い労働者として輩出されています。日本の若い労働者は、労働市場において彼らと競争しているのであり……

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斉藤惇 プロフィール

斉藤惇斉藤惇(さいとう・あつし)
株式会社東京証券取引所グループ 取締役兼代表執行役社長
株式会社東京証券取引所 代表取締役社長

1939年10月生れ 熊本県出身
1963年、慶応大学を卒業後、野村證券に入社、同社に35年間勤務。その間、2回のニューヨーク勤務を経て、1986年、取締役に就任。資金債券本部を中心に、株式本部、投資信託本部、開発商品本部から財務、法務に至る広範な分野を担当し、常務取締役、専務取締役、副社長を歴任。

ニューヨーク在任中の1980年代後半には、不良債権の証券化、不動産の証券化、さらにコモディティを証券化したインデックス・ファンドなどの商品開発・販売に積極的に取り組んだ。

橋本内閣が推進した日本版金融ビックバン政策においては、政府の各種審議会委員として参画し、日本の金融サービスの自由化に力を注いだ。

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